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‟いいとこ取り”の「現代町家」

June 22, 2016

「町家(町屋)」という言葉を聞いた時、みなさんはどんなイメージをされますか?

 

昔ながらの佇まいが並ぶ「京都」をイメージされる方もいるかもしれません。そして、多くの人は、「長屋」、つまり「うなぎの寝床」を連想する人も多いかと思います。そして、その言葉からは、なんとなく「窮屈」「暗い」「住みずらい」といったイメージを持たれる方も多いでしょう。しかし、実は、その長屋・町家には、四季の変化と寒暖の差が厳しい日本で暮らしてきた先人たちの知恵がたくさん詰まっているのです。

 

例えば、寒さ厳しい日本の冬・・・町家の特徴でもある隣家同士が何軒も連なった姿。実は、厳しい寒さの中で、隣同士の生活で発生した熱をなるべく外に逃がさないための工夫なのです。それは、まるでお互いの体を寄り添って暖め合うかのように機能していました。断熱技術が現代のように進化していなかったこの時代、両隣の家々が連続でつながっていることは、とても理に適ったことだったのです。

 

そして、強い日差しと蒸し暑さが特徴的な日本の夏・・・うなぎの寝床のように細く長い伸びた町家の軒先には簾(すだれ)が、中を覗くと奥まで長く続いた土間スペースがあります。実は、これも先人の大いなる知恵。容赦なく照りつける日差しは、長く伸びた軒と簾によって遮られ、外から家の奥に侵入してくる熱風は、一旦、冷えた土間の上を通り抜けることで冷却され、家の奥に入ってくる頃には心地よい風に変わっています。今のようにエアコンなどない時代に編み出された先人の知恵には頭が下がる思いです。

 

そして、町家の中央部分にはコの字に切り取られた中庭があります。これもやはり先人の知恵。直射日光を木漏れ日に変える植栽や池をつくることで、家の中に暑いところと涼しいところを人工的につくり上げて風をつくるという工夫まで考えられていたのです。

 

さすがに現代の建築基準法では、様々な規制により、この「うなぎの寝床」を再現することは認められていません。また、隣同士の家が共通の壁一枚でつながることも、プライバシーを重視する現代のライフスタイルにはそぐわないでしょう。だからこそ、その町家のいいところだけを取り込み、進化した断熱・気密技術を駆使し、現代の暮らし方に見合ったカタチに再設計することが、機械設備に過度に頼らず、外を取り込み自然体で人間らしい暮らしにつながる・・・そんな思いから生まれたのが、この「現代町家」という考え方であり、近年建築業界で盛んに取り上げられている「パッシブデザイン※」の原点とでもいうべき考え方なのです。

 

実は、この上越地域の古い街並みにも、この「うなぎの寝床」がまだあちこちに残っています。雪国であることから「雁木」をつくり、人々の往来、つまりは「つながり」を守る工夫もありました。ほんのちょっと前の上越・妙高・糸魚川の暮らし。その懐かしくも肩ひじ張らない「粋」な暮らし方、「最高の地元ライフ」をキノイエで実現していきたいと考えています。

 

町家にはこの他にもまだまだ特筆すべき利点がたくさんあります。そして、さらにその優れた町家の思想を深く掘り下げ、現代の暮らし方に合う形に進化させた「現代町家」の設計思想をこのブログで少しずつご紹介していこうと思いますので、どうぞお楽しみに。

 

町家

 

中庭 町家

 

 

町家の間取り

 

※パッシブデザイン【passive design】: 建築の設計手法の一つ。 特別な機械装置を使わずに,建物の構造や材料などの工夫によって熱や空気の流れを制御し,快適な室内環境をつくりだす手法。

 

 

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