キノイエのつくる標準的な建物は、延床面積で35坪以内。この上越地域の家づくりとしては、けして大きくはない建物です。
ですが、いざ建物内に入った多くの人が口にするのが「思ったよりも広く感じる」「全然狭さを感じない」という言葉です。もちろん、多くの住宅展示場見て回られた方であれば、おのずと面積を聞いただけで、どのくらいの空間になるのかは想像がつくはずです。それでもなお、「広い」と感じる理由、それは「ソト」と「ナカ」を上手につなげているからなのです。
その一つの手法に、「ゲヤを上手に使う」というワザがあります。ワザと言ってもけして奇抜なアイディアでも、新しく生み出された手法でも何でもなく、これまでの日本の暮らしの中にあった「あたり前」の知恵と工夫です。
昔の農家の大屋根は、軒が長く伸び、その下には「軒内空間」ともいうべき「緩衝空間」がありました。ソトでもあるけど、ナカでもある・・・雨は当たらず、日差しも遮る、しかし、自然の風はその下を流れていく。そして、視覚的にもソトとナカ、どちらから見ても、今いる場所とつながっている空間として認識できる不思議な領域。実際、そこに様々な暮らし方を重ねてみると、それは単に視覚効果を狙った類の話ではなく、非常に理に適ったスペースであるということが実感できると思います。毎日手入れをするプランター、子供たちが飼っているメダカ、庭やデッキを使ってのホームパーティー、雨雲を気にしながらの子供たちとの花火、お父さんの喫煙オアシス、道具の手入れ・・・まだまだたくさんの暮らしのシーンが思い浮かびます。
京都の町家は特にこの軒の使い方で暮らしの快適さを創造しています。小さな敷地にうなぎの寝床。しかし、一たび家の中に足を踏み入れると、坪庭があり、軒に囲まれたいくつもの空間が、奥行きと情緒ある住まいを創り上げています。
家はコンパクトである方が経済的にも有利。でも、小さく収まるだけでは多くの暮らしの楽しみ方を犠牲にします。だから、キノイエでは「小さくつくって大きく暮らす」ための様々な工夫を設計の中に取り入れています。
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