家の断熱・気密性能が高ければ、省エネであることは誰でもわかる話ですが、性能と同じくらい、家のエネルギー消費に影響するもう一つの要素についても考えなくてはいけません。
「大は小を兼ねる」・・・これは、日本が高度経済成長全盛期に沸いた時代、特によく使われた言葉です。サイズは大きい方がよく、機能は多い方がよい。足し算すればするほどよくなる・・・これがその時代の概ね一般的な価値観でした。
ですが、今はどうでしょう?大きいことは必ずしもいいとは限りません。
ちなみに、大きな動物は、摂取するエサの量も多くなり、また呼吸の量も多くなります。それと同じように、家の面積(容積)も大きくなればなるほど、冷やしたり温めたりしなければいけない面積(容積)が増え、消費する光熱費も上がります。しかし、そこに住まう家族の人数が同じであれば、どうでしょう?当然ですが、一人当たりの専有面積(容積)が増えることになります。つまり、一人が快適になるために使う光熱費が跳ね上がるということになります。
省エネ住宅を考える際、一軒分の家で必要とするエネルギー量がどのくらになるのか?というものさしで冷静に考えてみると、小さな家であることの付加価値の大きさに気付くのではないかと思います。
でも、小さくすれば窮屈になるのではないか?・・・たしかに、ただ小さくしただけでは、脳がありません。どこをどう小さくするのか?が肝なのです。
例えば、普段全く使わない部屋やスペース。これは、プランニング段階のヒアリングの甘さ、設計の甘さで生じる無駄な空間です。居心地を考えながら、どこで本を読み、どこで寝ころび、どこで会話を楽しみ、どこで書き物をするのか?などを一つひとつ丁寧に考えたプラン、反対に言えば、「使わない場所」、「居ない場所」を極限まで引き算されたプランを見ると、案外、間取りの足し算では考えられなかったサイズの空間に落ち着きます。そして、そうしたミニマリズムを極めたプランには、必ず庭や縁側、軒下空間などの緩衝空間に、窓の位置やサイズを含めた「ソトとナカのつながり」を考えた設計思想が入っています。
また、平面だけでは見えてこないこともあります。天井はむやみに高くせず、人が落ち着くと感じられるちょうどいい高さを導き出します。そうすると、イマドキの家ではこれが標準と言われる天井の高さよりは少し低いものになります。ですが、これがまた何とも言えない視覚効果を生み、落ち着いた空間が生まれます。「天井の高い家はいい」とは限らないのです。
キノイエは、「小さくつくって大きく暮らす」ことをモットーにしています。コンパクトでハイクオリティ、そしてコストバランスのいい住まい・・・小さいことはまずエコであること。今回は、「小さな邸宅」イロハの中の「イ」のお話でした。
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