住まいの設計で、多くの人が壁に当たるのが、「膨らんだ間取りをいかに縮めるか?」という問題。予算とのにらめっこでいちばん神経をすり減らす部分です。夢をたくさん詰め込めば詰め込むほど、それに比例して間取りは大きくなるものです。
そこで、キノイエでは、最初から間取りの足し算ではなく、「引き算する設計」を軸にしたプランニングを行っています。引き算する設計には、様々な極意があります。その一つは、「使わないスペースを極力排除する」、あるいは、「使う頻度の少ないスペースを極力縮める」です。そしてもう一つの方法、それは、「あまり使わないスペースを多機能化して使い倒す」です。
平牛の家 玄関ホール
その分かりやすい一例が玄関ホール。玄関ホールが使われるのは、自分たちの出入りと来客対応時。つまり、使うタイミングは非常に限られており、実際は閉じられたままで使われない時間の方が圧倒的に多いのです。見栄を張らない限り、本来のスペースとしては最小でいいということになります。小さくつくって大きく暮らす設計では、ここを小さくすることが原理原則になっています。
平牛の家 玄関ホールから外へのアクセス
しかし、キノイエでは、あえてこの玄関ホールを普通よりも広く取るケースがあります。まさに、「どうせあまり使わないスペースなら多機能化して使い倒す」の発想です。写真のように、塩屋新田の家、平牛の家どちらも玄関ホールはあえて広く土間スペースを確保し、リビングの中に取り込んでいます。リビング自体の設計面積は、わずか11~15帖程度とかなりコンパクトなのに、この玄関ホールを取り込むことで、こんなにも広々した空間に変わります。そして、この土間空間こそが、外のデッキスペースや庭、離れスペースなどに接続するハブのような存在となっており、一日の流れの中で幾度となく使われる、まるで第二の勝手口のような機能を果たしてくれます。
平牛の家 リビングから玄関ホール(障子で玄関ドアホールを隠した状態)
塩屋新田の家 玄関ホール(引き戸により、土間部分を2つの空間に仕切ることが可能)
「でも、来客があった時は丸見えじゃないの?」という疑問の声が聞こえてきそうですが、ご心配なく。たった一枚の引き戸を入れておくだけで、その時だけ空間を一度遮断し、小さな玄関ホールをつくります。そうすることで、急な来客や宅配便の受け取りなども、プライバシーを確保しながら応対が可能になるのです。
使う頻度が少なければ、発想を変えてよく使うスペースに取り込む。ちょっとしたことが大きな意味を持つ、引き算する設計のちょっとした極意。その一部のご紹介でした。
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