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解説「パッシブハウス」その1


December 20, 2016

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December 20, 2016

弊社が施工を担当させていただき、昨年11月に竣工を迎えた世界最高水準の省エネ性能、ドイツパッシブハウス研究所認定の「前沢パッシブハウス」(富山県黒部市/発注者:YKK不動産株式会社様)、度々こちらのブログやサイト上にてご紹介しておりますが、今回は、この「パッシブハウス」について、本日より3回に分けて少し詳しく触れてみたいと思います。

 

 

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まず、「パッシブハウス」は一体何者か?ということから、なるべく丁寧にご説明したいと思います。

 

 

様々な住宅会社がこの「パッシブハウス」の言葉を使用しており、一部に間違った解釈の記述や、拡大解釈して使用されているケースも見受けられますが、正確には、ドイツの物理学者ウォルフガング・ファイスト博士が発案し、1991年にパッシブハウス研究所(ファイスト博士が創設)で確立された省エネ基準です。「年間の冷暖房負荷」(※1)「気密性能」(※2)「住宅全体の一次エネルギー消費量」(※3)の3つの項目で一定の基準(※4)を満たすと認定されます。

 

※1 冷暖房負荷
室内の快適な温湿度を保つため、冷房・暖房で必要とするエネルギー量。

 

※2 気密性能
密閉により、空気の流れや熱・水蒸気などの出入りを妨げる性能。

 

※3 一次エネルギー消費量
電気やガスなど、住宅で消費するエネルギーを作り出すために必要なエネルギー(石油・石炭)を熱量で表したもの。

 

※4 パッシブハウス基準
「冷暖房負荷が各15kWh/m2以下であること」「気密性能として50Paの加圧時の漏気回数が0.6回以下であること」「一次エネルギー消費量(家電も含む)が120kWh/m2以下であること」の3つをクリアすることで認定される。

 

 

・・・すぐに理解するのは難しいですね(笑)ということで、ここからは、もう少しかみ砕いた解説になります。

 

 

日本におけるパッシブハウスの第一人者でもある森みわ氏(キーアーキテクツ代表)が代表理事を務める一般社団法人パッシブハウス・ジャパンのウェブサイトでは、パッシブハウスを「厳しい燃費の基準を乗り越えた家のこと。断熱材や高性能な窓、熱ロスの少ない換気システムなどを駆使して、寒さや暑さをガマンしない、快適さを生み出す家。 自然の力を最大限利用し、少ないエネルギーで、快適な暮らし。日本の気候風土を利用した燃費の基準」と解説しています。この背景について、さらに丁寧に解説してみたいと思います。

 

 

現在、日本の住宅業界では、ZEH(ゼロエネルギー住宅)という言葉があたかも省エネ住宅の最終形のように宣伝されている風潮がありますが、この分野に関して実は日本は非常に遅れた後進国。日本のZEH基準は、エネルギーの取得や消費プロセスはあまり重視されず、太陽光発電などアクティブな機器を多用すればOKになるよう設定されています。若干乱暴な表現を借りると、家の価格を安く見せるため、家の性能を多少下げてもオプション機器の組み合わせで「ゼロにできますよ」、つまり「機械依存」「帳尻合わせ」のZEHでも構わないという状態を生み出しています。大手家電メーカーや特定機器を量産販売したいハウスメーカーにとっては非常に好条件の環境ともいえるでしょう。(ZEHの理解については、ブログ記事「本物のゼロ・エネルギー住宅はどれ?」をご参照ください。)

 

 

ZEH|上越市・妙高市・糸魚川市の注文住宅|木の家づくり工務店|キノイエ|

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それに対して、ヨーロッパの住宅の省エネ化に関するスタンスは全く違います。その時代のアクティブな設備に頼る前に、まずは建物性能(断熱・気密)を高いレベルに上げておく、つまり「パッシブ(受動)」を優先してゼロを達成しようという考え方を基本に置いています。つまり、冷暖房機器や発電機を拡充する前に、家そのものがまとう衣を最高レベルに引き上げましょうという考えです。こうすることで、いかなる時代の変化や機器類の栄枯盛衰にも影響されることなく、家の省エネ性能を担保することができます。

 

 

日本の家は30年遅れている

※一般社団法人パッシブハウス・ジャパンより

 

 

その考え方の違いは、国レベルのエネルギー政策に対する危機意識の違いからきています。以前のブログ「世界一「燃費の悪い住宅」」でも触れている通り、国が義務とする住宅の省エネ基準レベルの違いが大きいと言われています。特にドイツを中心としたヨーロッパ諸国では、早い段階からエネルギー供給不足が深刻な問題になっており、エネルギー消費のウェイトが大きい住宅の断熱性能を上げることで、一次エネルギーの消費を抑えようと努力してきました。つまり、家庭での電力浪費は国としての大きな問題なのです。電気料金も日本の価格とは段違いの高さであることからも、その深刻さは私たちの想像をはるかに超えるものがあります。

 

 

【電気料金(家庭用)の国際比較】

 

世界の電気料金

※一般財団法人 電力中央研究所出典

 

 

かなり知識的な話が重なりましたので、ここで少し休憩です。続きは、明日のブログにて。

 

 

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