ムダがない小さな邸宅は、あらゆる面でエコであり、かつ住まう人に与えるストレスもミニマムになります。小さいことが窮屈につながるのでは?という心配が出るのは当然のことですが、小さいことが必ずしも窮屈に直結するとは限りません。むしろ、大きいことで生じるモノの散乱、探す時間、間延びした居場所、温まりにくい容積とエネルギーロスなど、空間がムダに大きいことがかえってストレスの増大を生むことはよくあります。
キノイエでは、「引き算の設計」に重きをおいています。目指すのは「小さくつくって大きく暮らす」心の充足度が高まる家づくり。もちろん、大きさは人と比べることではありませんが、誰よりも充実度・幸福度の高い家を限られた予算の中で実現することが、いい家の条件であると私たちは考えています。小さいことで得られる上質感とまとまり、ほんの少しだけ他とは一線を画す付加価値の高い家を実現することが私たちの仕事です。
キノイエでは、そのための様々な仕掛けを設計の不文律の中にちりばめています。その一つが、「ソトとナカをつなぐ」設計。まずはその敷地の性格を読み取り、かつ隣地との関係性を見極めます。その上で、季節毎に現れるいちばん美しいソトの景色を、どう切り取ってナカに取り込むかを考えながら窓の位置や大きさ、その数を徹底的に吟味して設計に反映していきます。
実は、ここでも、引き算の思想を大切にします。多くの住宅会社が陥ってしまう間取りの失敗は、「明るい家」に目が行き過ぎて、南面にできる限り窓を取り付けるという失敗です。そうすることによって、見たくない景色(道路の歩行者の目、隣の家、さらには数軒離れた近隣の家の視線など)までもを取り込んでしまい、居間やダイニングに必要な安らぎを失ってしまうことが往々にして起こります。(もちろん、サッシの数が増えることで、単純にコストアップと同時に熱損失のリスクも上がり、建物燃費にも影響が出ます。)
心地よい暮らしを演出する設計の要素には、「壁」という大切なアイテムがあります。ソトとナカをつなぐ設計とは、「ひらく」ことばかりではなく、「とじる」ことも重要な要素です。ソトの景色や光を取り込む窓の位置や大きさなどが決まれば、それ以外の空間で大胆に壁を残すことで、よりソトとナカのつながりを意識することにつながります。
言い換えれば、家の中に「暗」があるからこそ「明」を愉しむ妙味が生まれるのです。
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