あの頃の賑わいを
October 3, 2017
先日は、弊社代表猪又が委員を務めている糸魚川商工会議所の「復興まちづくり推進特別委員会」主催のまちづくり先進地視察研修で、新潟市の「沼垂(ぬったり)テラス商店街」他、県内の商店街を数ヶ所視察してまいりました。大火で焼失した糸魚川市の駅北の復興まちづくりのためのヒント探しに訪れました。
この沼垂(ぬったり)という珍しい名前の場所、実は、日本ではいちばん古い防衛の拠点「渟足柵(ぬたりのき)」から由来している歴史ある土地のようです。その沼垂(ぬったり)市場(旧東新潟市場協同組合/沼垂寺町市場ともいわれます)は、昭和30年代に市の施策により堀を埋め立て、現在地(沼垂3丁目)に設置されました。当時近隣には大きな工場がいくつもあったことから、市(いち)と言われる店舗がずらりと連なった当時の沼垂市場通りは昼夜を問わず、大変賑わっていました。しかし、近年では、工場も一つを残して全て撤退し、郊外の大型店舗の出店に加え、店の経営者や町の人々の高齢化により徐々に閉店が進み、しばらくの間は数店舗が営業するだけの文字通りのシャッター通りとなっていました。
それが、数年前から、ノスタルジックでゆったりとした空気感を気に入った若者たちによって、惣菜店、手づくり家具店、陶芸工房などの出店が相次ぎ、この通りの魅力が見直され始めたのが、一つの契機となりました。しかし、当時の市場通りのシャッター店舗は組合によって管理されていましたが、高齢化による維持管理の低下、加えて組合規約により組合員以外の出店は制限されており、意欲をもった店主の新規出店にとって大きな障壁となっていました。
そこで、昔からこのエリアで代々割烹を経営していた現在の若手オーナーの姉弟が管理会社を立ち上げ、シャッター店舗を全面買い取ることを決断。新しい再生プロジェクトの立ち上げが実現したことで、市場一帯を総合的に統一したコンセプト・デザインのもとで開発が一気に進みました。オーナー姉弟の地元愛、そして勇気に頭が下がる思いです。
オーナーの熱意は早くに実を結び、プロジェクト立ち上げからわずか数年の間に、現在ではおよそ30店舗のシャッター店舗が、雑貨店や工房、パン屋、書店、カフェなどが連なるノスタルジックでかつ新しい、おしゃれな商店街へと変貌しました。限られた予算の中、SNSを中心に情報発信をこまめに続けていったことで、現在では多くの県内外のメディアが取り上げる話題の商店街となりました。
あちこちが老朽化し、錆びた鉄板には古い店舗の表示が残っているような長屋が、新しく入居したオーナーたちの手によって、センスの良い空間が生み出され、それが何軒も連なることで、何とも言えないフォトジェニックな街並みをつくりあげています。
また、この沼垂市場商店街の登場によって、隣接エリアの空き家の中には、リノベーションされた外国人観光客向けのゲストハウスが登場するなど、少しずつ近隣商店街への波及効果も出てきているようです。
古い空き家をリノベーションしたゲストハウス
ちなみに、沼垂市場商店街の裏手には、かつて多くの労働者で賑わった飲み屋街も。戦後未亡人の救済を目的に「一代限り」として好条件で提供された場所ということもあり、今は高齢化が進み、営業しているのは一店舗のみとのことです。こちらもまた、何ともノスタルジックな風景。もしかすると将来の活用が期待されるのでは?と思わせる面白いスポットです。
これからますます発展が期待される沼垂テラス商店街。この視察を通じて何よりも感じたことは、やはり「まちに命を吹き込むのは人」。どんなインフラ整備も補助金も、そのまちをなんとかしたいと情熱を傾ける人の存在抜きには、まちの再生は成し得ないということを再確認しました。家づくりもまた同じ。「本物のいい家をつくりたい」という建築に携わる私たちの情熱こそが、ひとの心を動かす住まいをつくり、ひいては街並みをつくっていくのだと信じています。
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