第二のリビングとしての「土間」
March 25, 2018
昭和から平成へ。大家族から核家族へ。二間続きの和室で法事や親戚家族の集まりをするというシーンが減っていったように、日本人の暮らし、そして家の機能はパブリック重視からプライベート重視へと急激に変化を遂げました。
パブリックを重視した日本の家の象徴の一つに、土間玄関があります。履き物を脱がずに誰もが気軽に入れる場所、家というプライベートな空間の中にあるパブリックな場所、緩やかにソトとナカをつなぐ場所。作業場としての生活空間でもあり物々交換を伴う接客の場でもあった日本特有の交流スペース、昔の日本の家には土間のある暮らしが当たり前でした。
現代の家でつくられる玄関は、間取りの関係から最小限に省略されています。それでも、近隣の方の突然の訪問、夫婦のご両親やご親戚の訪問など、こと「中に上がってもらうまでもない」用事では、この狭く省略された空間でのコミュニケーションが重要になります。寒い日、暑い日は玄関ドアを開けっぱなしにすることもできません。閉めてホールに入ってもらうと今度はお互いの距離がやや近過ぎる・・・なんてことも。狭い密閉空間でのコミュニケーション、相手も気を使って、会話も手短になる・・・迎え入れたこちらもなんとなく「追い払った」ような罪悪感を感じてしまう・・・なんて経験をされた方も少なくないことでしょう。外来客と接触する重要な交差点の玄関。昔の人々の関係性に比べれば致し方ない面もありますが、プライベートの性格を強めた現代の家で、限りなく省略に次ぐ省略を重ねたことで、そのコミュニケーションのあり方までをも変貌させてしまったように思います。
そこで、キノイエでは、このスペースを現代の暮らしに生かす設計を大切にしています。
ポイントは、玄関を限りなく居室としてナカに取り込むこと。玄関土間をうまく活用した設計により、第二のリビングとして驚くほど活躍する空間に生まれ変わることができます。久しぶりに用事があって訪ねてくれた友人、届け物をしてくれた義理のご両親など・・・5分、10分で済む用事でもそのわずかな時間こそがとても大切なコミュニケーションの時間。リビングにつながる広い土間の椅子に腰を掛けてもらい、台所でお返しの品を用意しながら世間話に花を咲かせる・・・そんな緩やかなつながりこそが現代の私たちの暮らしには必要なのではないでしょうか。
もちろん、玄関を開けた来客の目にいきなり生活の場が飛び込んできたのでは、お客様も住まう人も落ち着けません。宅配便やセールスの訪問など、本当に玄関先で応対するだけで十分のケースもあります。そのあたりのこともふまえ、キノイエでは仕切り建具や視線の緩衝壁を設けるなど、空間を上手に仕切る工夫もなされています。必要に応じて、開けるときは開ける、閉めるときは閉める。このメリハリが現代の暮らしには必要です。
プランニングに必要なことは、家として必要な部屋数や畳数だけでは測れない、人と人との距離感や暮らし向きといった心理作用にも目を向けていくことにあります。かつての日本人の暮らしには、多くのヒントが詰まっています。
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