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対極をあわせもつ


February 12, 2020

February 12, 2020

“建築家は、相反する要求条件でも、いずれをも切り捨てることなしにうまく処理しなければなりません。快適さとは涼しさでしょう。すなわち空気の流れや日陰です。しかし陽光を楽しみたいと思う季節には、やはり適当な時刻に太陽がさしこむべきなのです。また、やぶ蚊が余りに多いので何らかの策が講じられぬ限り窓を開け放つ事も許されません”

 

 

これは、20世紀を代表する建築家、近代建築の巨匠ル・コルビュジエの残した言葉です。コルビジェと言えば、新しい建築の5原則(ピロティ、自由な平面、自由な立面、独立骨組みによる水平連続窓、屋上庭園)を提唱した人物で、その最高傑作ともいえる「サヴォア邸」が有名ですが、そんなコルビジェが残したこの言葉は、現代の日本の住宅建築においても未だに色あせない原理原則を語っているともいえます。

 

 

サヴォア邸

サヴォア邸

 

 

世界遺産に登録された「国立西洋美術館」は日本で唯一のコルビジェの作品(写真:Wikipediaより)

 

 

昔の日本の家。長い軒に縁側があり、庭には落葉樹・・・夏は蒸し暑く、冬は寒い。その四季の厳しさに対し、日射や風の遮蔽と取得を上手に使い分けるなど、昔の人々は、様々な知恵と工夫で快適さを手に入れてきました。

 

 

 

 

キノイエの提唱する「パッシブデザイン」、「パッシブ設計」は、太陽の光や熱、そして風といった「自然エネルギー」をより効果的かつ受動的に利用して、なるべく冷暖房機器の過剰な運転に頼らず、住まいと地球に負荷をかけない快適な暮らしを実現しようとする設計思想をもっています。 太陽の光と熱、そして自然の風は¥0(タダ)。自然の光や風を上手に活用して冬は暖かく、夏は涼しい住まいを実現することで、電気やガスなどへの依存率が減少し、省エネでありながら快適で健康的な暮らしを実現することこそ、今の時代に求められる暮らし方。コルビジェもまた、こうした考えを持ち合わせていたのです。

 

 

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自然と機械。自然の過酷さと快適さ・・・相矛盾する条件・・・茹だるような夏の暑さ、凍てつく冬の寒さに、現代は高性能な断熱で外界を遮断し、強力な冷暖房機器で対峙できる時代。ですが、同時に住まいはもっと自然と調和した快適な器であるべきという、対極をあわせもつ建築思想が必要なのです。

 

 

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