記録的な小雪、というより、まちなかは、ほぼ無雪という異常なまでの暖冬が続いています。上越地域の2月平均気温は本来なら3~4℃。しかし最近は日中の最高気温が10℃超え。既に3月下旬の春の陽気を感じるこの頃です。
春といえば、その訪れを感じる要素の一つに、山菜があります。春になるといっせいに芽吹き、至る所に自生する山菜を採りに多くの人が山へと足を運びます。自生する山菜の旬は短く、その出会いは一期一会。その都度採れたての山菜が食卓に並ぶ光景は私たちの暮らしにとっては当たり前の光景。きっと今年は旬の山菜が食卓に出回るのも早いことでしょう。
山菜の栄養成分にはミネラルやビタミン類などが多く含まれています。タンパク質や脂質が少なく、食物繊維が多いのが特徴ですが、同時に健康の維持・増進機能があるということが近年の研究によって確認され、あらめて健康食品としても注目されています。
日本各地の都市部の暮らしに目を向けてみれば、今や年中いつでも旬に関係なく、たくさんの山菜がスーパーの店頭に並んでいます。しかし、実は、現在日本各地の食卓に並んでいる山菜のほとんどは自生ではなく、栽培ものです。山菜ブームにより商品価値が注目されると、各地の原生林で乱獲が起こると共に、生産効率化の観点からそれらが次々に栽培へと切り替わっていきました。例えば、タラの芽は、今やその多くが発泡スチロール製のケースの中で育てられています。ワラビや葉ワサビ、ヨモギなどもハウス栽培。実に多くの種類の山菜が栽培によって大量生産され、全国各地の市場に出荷されています。
本来、天然自生の山菜は、土手のような開けた草地やまだ葉が生い茂っていない森の木々の下に生えます。春の陽気と共に地表に射し込む陽の光を浴びながら芽を出していきます。
しかし近年、日本の林業の衰退と共に天然自生の山菜にも多くの影響が出ています。山の間伐や草刈りが行われず落葉樹が減ることで、森全体が照葉樹に覆われると、春になっても陽が差し込ず、山菜の芽吹きが妨げられてしまいます。また、過疎化、高齢化が進む農山村では、山に入って山菜を採取する人自体も減小傾向にあります。そのような中、私たちの地元では、今でも採れたて旬の自生山菜が当たり前のように食卓に並んでいます。このこと自体、とても贅沢な暮らしであるといえるのではないでしょうか。
ちなみに、天然自生の山菜には、一般的にアクと呼ばれている、クセのある苦みやえぐみがあります。この成分こそ、鉄や亜鉛、銅、ヨウ素、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムといった豊富なミネラル分で、理想的な含有バランスを有しているものが多く、栽培ものとの決定的な違いになります。旬を逃さずに食することで、山菜は薬草の一種としての役割を発揮します。(※旬を過ぎ成長した山菜の一部は、身体に悪い有機化合物が合成されるものもありますので注意が必要です)
日本でも有数の森林資源を保有する新潟県、その中でも私たちの暮らす上越地域、特に糸魚川市はトップクラスの山林面積を持つ緑豊かなまちです。最高の地元ライフ・・・「旬」が身近にある幸せをしっかりと噛みしめてつつ、地元の森林資源を守り、次世代につなぐ役目をしっかりと担っていきたいと考えています。
※写真提供:サンタクリエイト 代表 山田 つとむ さん(キノイエの撮影でお世話になっているカメラマンさん。十日町在住。山菜をこよなく愛する素晴らしいクリエイターさんです。)
サンタクリエイト 山田さんの考案した「着る山菜」シリーズが静かなブームになっています
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