お盆ということもありますので、本日は、仏事、とりわけ仏壇に関係する話題を取り上げてみたいと思います。
皆様は「わたませ(わたまし)」という行事、ご存知でしょうか?この言葉に耳覚えのある方は、出身地やお住まいの地域がかなり限られてくると思われます。
「わたませ」、地域によっては「わたまし」と呼ばれるこの言葉、漢字では「渡座」と書きます。正式には「渡座法要」。その意味は「新しい家に渡りませ」という言葉に由来しているという説があります。
渡座(わたませ)法要については宗派の違いや諸説ありますが、誤解を恐れず一言で説明すると、お仏壇に新しく御本尊をお迎えしたとき、家に新しくお仏壇をお迎えしたとき、また修理したお仏壇が帰ってきたとき、そのお家に仏さま(お内仏)を迎え入れる入仏法要のことです。他にも「御遷仏(ごせんぶつ)」「御移徙(ごいし)」等の云い方があるようです。私たちの住む上越地域、特に糸魚川の一部地域においては、家を新築した後、この渡座法要を済ませておかない(仏様が不在の状態の)まま、その家で不幸があった場合、葬式を上げることができないという語り伝えがあるほど、古くから、この渡座法要の重要性がうたわれてきました。このため、私たちの経験上では、仏壇のある住まいの建て替え新築であれば、完成後のかなり早い時期(およそ数ヶ月~半年以内)に執り行うケースが多いようです。
わたませ法要には、その家のお寺様と親族、そしてその家を建てた大工の棟梁(施工会社)などを招くのが一般的です。このため、私たちもこれまで多くの新築住宅のお引き渡し後に、この渡座法要並びにその後に開かれるお斎(おとき)の席にお招きいただくことがありました。
家の新築にあたり、地鎮祭や上棟式のことは広く一般的に知られていますが、この渡座(わたませ/わたまし)をご存じないという方は非常に多いと思います。それもそのはず、実はこのわたませ法要、全国でも非常に限られた地域での風習らしく、この周辺地域では、上越・糸魚川地域から富山県東部(朝日町?)あたりまでしか執り行われていない行事のようです。理由ははっきりしませんが、まさに、この地域独特の伝統文化であるといえます。
しかし、そのわたませも、年々執り行う家庭が少なくなってきているようです。世代交代が進み、家づくりの中での祖父母・親世代の関わりが薄くなっていることに加え、そうした伝統文化についてのアドバイスができる住宅会社も少なくなってきていることも大きく影響しています。
もちろん、こうした行事を取り入れるか否かの選択は自由ですし、迷信のように縛られる必要もないと思います。しかし、その意味をよく知り、家族として十分に判断をした上での選択があるのとないのとでは、大きく違ってくると思います。
家族は先祖代々のつながりによって生かされています。それぞれの地元ならではの暮らし方、家族ならではの暮らし方はある意味無形の財産です。そのつながりを後世に残すお手伝いをすることもまた、私たちの仕事です。
お盆にちなんでのちょっとした話題でした。この地域で皆様と共に最高の地元ライフを。
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