地味だけど重要な金物検査
July 27, 2017
上越市内で新築中の建物の金物検査を実施しました。
「金物検査」とは、施工会社が「住宅瑕疵担履行法」に基づき義務付けられている中間検査項目の一つで、建物が上棟後、内部の躯体の接合部が正しく施工させているかを厳しくチェックする検査です。国土交通大臣が指定する保険法人、つまり外部の検査機関の手によって行われ、主に図面記載通りの金物が取付けられているかどうか、及び取り付け方そのものが正しい手順で行われているかのチェックを行います。
一見地味に感じるこの検査、しかし、実際は建物の心臓部に関わる非常に重要な検査です。実は、残念なことに、プロの世界であっても、この金物施工に関する施工不良は未だ珍しくなく、業者の施工レベルや意識によって大きな開きが出る部分でもあります。例えば、金物の取付け忘れと取付け間違い、単純なビスの打ち忘れ、抜け、作業手順の間違いで最後のビスが打てなくなる、ビスの斜め打ちによる強度不良など様々。なぜなら、こうした作業不良は、大量受注で厳しい工程スケジュールの中で忙しくなり、一点一点の作業精度が落ちたり、また比較的小規模事業者であっても、そもそも技術環境の変化に順応できていない場合に起こりやすく、意外にムラの発生しやすくなる作業工程なのでです。ですので、ここはお施主様にもしっかりと確認していただき、安心していただかなければならい重要な検査項目なのです。
この施工不良は、ダイレクトに建物躯体の強度に影響します。仮に設計図面上で「耐震等級3」であっても、金物部品の取り付け不良、ビスの欠落、斜め打ちなどがあるだけで、その性能値は全く発揮できないことになります。
私たちは、外部機関による検査の前に、まずは徹底した自主検査を行います。また、検査状況をこまめに記録し、お施主様にも写真を添付の上ご提出するように標準化されています。
ちなみに、一枚目の写真の床、床合板養生用の汚れ防止フィルムを施工してあるのがお分かりでしょうか。施工中はこうしてフィルムでしっかりと保護されていますので、足跡や汚れが付着することはありません。下地の合板で最後は見えなくる部分ですが、こういうところに手を抜かないのが私たちの信条です。
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チームでカイゼン
July 25, 2017
弊社では、新築・リフォームに限らず、毎月定期的に建設現場のパトロールを行っていますが、「手前味噌」や「上すべり」にならないための工夫と対策を打っています。
その方策の一つが、「チーム全体で“厳しく”チェック&アクションを行う」ということです。
弊社では、自社単独のパトロールの他、「三丸会」と呼ばれる合計57社から組織する協力業者会の担当者にも参加して行うパトロールを並行して行っており、そのパトロールはさらに、「環境・美化」に関する班と「安全衛生」に関する班とがそれぞれに厳しい目で現場をチェックするという体制を取っています。
しかも、その評価基準は極めて厳しく、用意されたチェック項目に従って評価をしていくと、ちょっとした不備や衛生面での欠落が総合点数に影響する評価計算方法を取っており、「なんとなく合格点」が出ないように厳しくチェックし、それを関係者全員で確認する仕組みにしています。
チェックシートは「見える化」を徹底。課題は全て、項目ごとに指摘事項の詳細、原因と対策が一目でわかるようになっています。この作業を毎月繰り返し、繰り返し行います。これによって、関係するすべての担当者の目がより厳しいものへとレベルが上がると同時に、直接お客様と顔を合わせない作業従事者の皆さんにも、私たちの“意思”が伝播していき、これが結果として、住まいのクオリティやブランドへとつながっていくのです。
住まいは完成してしまえば、どれも新品できれいなのは当たり前。ですが、その完成のまでのプロセスにおいて、近隣の皆様の目にどう映っているかということにまで目を向けなければ、プロの仕事とは言えません。私たちはこうした、普段は見に見えない部分にも手を抜くことなく心を入れ、これからも本物の品質とサービスを提供していきたいと考えています。
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真価を発揮
July 23, 2017
本日は久しぶりの雨模様ですが、ここのところ本当に暑い日が続きましたね。
先日7月21日(金)の上越市高田の最高気温は34.8℃を記録!もうちょっとで「猛暑日」となる状況です。この日いちばん気温が上昇した15時にキノイエモデルハウス「塩屋新田の家」の温度データを覗いてみると、結果はこうでした。
外の計測結果は、35.4℃。じりじりと照り付ける太陽。何もしなくても汗が噴き出してきます。
そんな中、家の中の温度を見てみると・・・
25℃台をキープ。もちろん家庭用エアコン1台が弱運転で、1階・2階ともに安定した温度が保たれています。最高レベルの断熱等級をもつフェノールフォームパネルでしっかりと気密処理まで施されたキノイエの性能は、真冬はもちろん、真夏もこうして真価を発揮します。
この日は、涼を感じる設えとして、南のメイン掃き出し窓に葦簀を取り付けてみました。塩屋新田の家の2階部分には、「吊りデッキ」と呼ばれるコストパフォーマンスに優れ、機能的なベランダが設置されていますので、葦簀やタープテントなどが簡単に取り付け可能です。
葦簀を取り付けた状態。ご覧の通り、涼を楽しむ日本の懐かしい暮らしの風情がそこに生まれます。この何とも言えない風情は、流行を追わず、何十年経っても飽きのこない普遍的な美しい住宅デザインにこだわっているからこそ。
ちなみに、この葦簀1枚だけでかなりの日射遮蔽を実現してくれますので、室内の空調効果はさらに向上します。そして何より、日中の強い日差しの中でもこうして窓の向こうの景色を目一杯取り込み、開放感を実現します。
ぜひ、真夏の昼間にこのリビングでダイニングチェアに腰を掛けてみてください。この何とも言えない居心地は格別です。
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もう一組の現地調査員
July 21, 2017
先日は「住まいの問診票」についてご紹介しましたが、そんな夢の詰まった問診表をいただいたら、今度はそれを元に現地の調査を入念に行います。
敷地調査とは、一般的に敷地の広さや高低差、道路の位置、巾、方位…などを現地に行って調べることをいいますが、私たちの敷地調査はそれだけでは終わりません。
お隣さんの高さや、距離、お隣さんの窓の位置、そして周りの景色、住んだ後に見える景色や前の道路を通る人たちからの見え方、太陽の光や風と仲良くする方法などを一つひとつ探っていきます。そこに、問診票で掴んだお客様の理想の暮らし方を重ね合わせながら、その場所に似合う空間をイメージしていきます。
どこに窓をつけて、どんな景色を 切り取るか…
ここに窓をつけると、どんなストレスになるか
お隣さんの玄関までのアプローチは…
光や風の通り道…
通行人やご近所の方からの見え方…
簡単な間取り(ゾーニング)をスケッチしてくることもあります。
今回も、そんなことを考えながら作業を進めていると… もう一組の意外な現地調査員が。
私たちよりもずっと前からこの場所を調べ尽くしているであろう小さな二人の来訪者。あどけない子どもたちの表情や声に監督員も癒されました。
遊びって、ゲームだけじゃないよね。いっぱい捕まえたかな??
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「問診表」という名のストーリーブック
July 19, 2017
弊社では、お客様が土地を決定された後、そこでどんな暮らしをしたいか、理想の家をイメージ・整理して頂くために、お客様から「問診表」を書いていただいています。
設問項目は実に様々。内容はここでは詳しく書けませんが、私たちのこれまでの長年の経験から編み出されたニクイ質問が随所に散りばめられています。この問診票に回答されたお客様からは、「楽しかった」「照れくさかったけど、たくさん書きました」と毎回好評です。また、同時にお客様にとって、自分たちの暮らしを少し冷静に考える上でも非常に大切な作業になっています。
今、設計担当の下にいくつかの問診票をお預かりしてます。読ませていただくと、そこには、いずれもほほえましいエピソードばかり。お客様の暮らし・スタイルがイメージしやすい、とってもとっても夢の詰まった、“ストーリーブック”になっています。
そして、中にはイラスト入りのコメントも…
」
また、問診票は、ご夫婦それぞれに記入していただきます。旦那様への思いやりや、奥様への感謝、気遣い、子供たちへの願い…いくつも垣間見える家族への思いが胸を打ちます。
暮らしの中の1秒、家族との一瞬 … お客様が大切にしたいこと妄想しながら、素敵な家になるよう、私たちも頑張ります。
夏本番の上棟式
July 16, 2017
昨日は、上越市内にて新築中のお住いの上棟式でした。
昨日の高田の最高気温は32.2℃。じりじりと照り付ける太陽の下、職人たちも大粒の汗をかきながら予定通り棟上げを完了。暑い中、お施主様並びに両家のご両親もご臨席の中、厳かに上棟式が行われました。
ずらりと並ぶ職人・技術者たちが羽織る法被に書かれた「タ」の文字。曲尺(かねじゃく)に創業者の名前である「猪又匤(ただし)」から一文字拝借して「カネタ」と呼びます。
お施主様にとっては、この屋根の上に上がるのはおそらくこれが最初で最後。澄み渡った青空、眼下に広がる周囲の街並みをしっかりと記憶に焼き付けていたのではないかと思います。
上棟式後、お施主様と共に念入りに施工現場の確認。
上棟式となったこの日には、既に構造・性能に関する主要部分の施工も完了していました。キノイエで標準採用されている高耐震・高気密・高断熱工法の「プレウォール工法」は現在、弊社がメーカーと共同開発した新工法を採用しています。断熱性能でトップクラスの素材であるフェノールフォーム・パネルはこれまで、構造用合板の外側にのみ設置されていましたが、今回の新工法ではフェノールフォーム断熱パネルを内外両面からサンドさせることで断熱性能をより強化。壁体内のちょっとした空間を無駄にしないつくり、高い製品精度、高効率の施工手順を確立することで、コストを抑えつつ、職人による施工ムラが発生しない仕組みになっています。キノイエの高い品質レベルは日進月歩で進化を続けています。
現在、上越市内各地でいくつかの新築工事が進行中。今後このブログでも進捗状況を随時ご紹介しながら、キノイエの家づくりについて少しずつ解説していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに。
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軒と土間のある夏の暮らし
July 12, 2017
じりじりと照り付ける太陽。いよいよ本格的な夏の到来を感じさせる日が多くなってきましたね。
こんな暑い日、昔の人はどのように暮らしていたのでしょう?今から700年近く前の大昔、吉田兼好は徒然草にて「家のつくりやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる…」という有名な言葉を残しています。ご存知の方も多いことでしょう。要するに、「冬の寒さは厚着をする等でどうにかなるが、夏の暑さはどうにもならない。だから、住まいづくりは、夏の暑さ対策を第一に考えよ。」という意味になります。高温多湿の日本の夏の暮らし方は昔から重大な関心事であったのです。
そう考えると、日本の古寺や歴史的な建築物の多くは、日射遮蔽と通風のメカニズムがよく考えられており、真夏でも内部が非常に涼しい構造になっていることがわかります。先人の知恵とは偉大です。
さて、現代の私たちの住宅事情に目を向けてみましょう。近年建てられた住宅のほとんどは、この季節、窓を閉め切ってエアコンをフル回転・・・というパターンが多いのではないでしょうか。
もちろん、快適であればそれはそれで全く問題ありません。でも、そんな真夏に、昔の日本建築のように自然な涼を感じられる環境が少しでもあるなら、私たちの暮らしはもっと豊かで味わいのあるものになるのではないでしょうか。
つい数十年前まで一般的であった町家づくりの家は、うなぎの寝床のように細く長い伸びた軒先に簾(すだれ)が、中を覗くと奥まで長く続いた土間スペースがありました。容赦なく照りつける日差しは、長く伸びた軒と簾によって遮られ、外から家の奥に侵入してくる熱風は、一旦、冷えた土間の上を通り抜けることで冷却され、家の奥に入ってくる頃には心地よい風に変わるようになっています。今のようにエアコンなどない時代に編み出された先人の知恵。日本の住宅はつい最近まで吉田兼好の教えをしっかりと守っていたのです。
私たちキノイエの家づくりは、そんなちょっと昔の日本の住宅の英知を現代の高性能住宅の技術とミックスさせることで、一般的な現代の住宅とは違う解放感や快適さを実現させていることが最大の特徴です。「気密性も断熱性も地域トップクラスでありながら、解放感も抜群の家」とでも表現すれば分かりやすいでしょうか(笑)
そのヒントは「ソトに伸びた軒」、そして「ナカにつながる土間」の存在にあります。コンパクトでありながらダイナミックな軒の出、室内に大きく取り込んだ土間スペースが、真夏の太陽光を遮ると同時に、流れる空気をやわらかく冷やす機能をもち、ソトとナカを絶妙につなぐことで、心地よい風を取り込む空間を生み出しています。
キノイエの住まいは、春夏秋冬全ての季節で感動を味わうことができる本物の家づくりを追及しています。以前、モデルハウスにご来場いただいたことがある方も、ぜひ真夏のキノイエを体験してみてはいかがでしょう。きっと新たな感動に出会えると思います。
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一棟一棟丁寧に確実に
July 5, 2017
先日、上越市内にある新築工事中の建物内の気密試験を完了しました。
弊社では、原則、新築住宅は全棟気密検査を行います。以前のブログでもご紹介しました通り、気密試験では専用の気密測定器を使い、家の中の「C値」を調べます。おさらいですが、C値とは、家の延床面積に対する 「 隙間面積 」 の割合を示す数値で、床面積1㎡当たりどれ位(何㎠)の隙間があるのかを表した数値です。この値がゼロに近いほど、隙間が少なく、気密性が高いことを意味します。
C値 = 家全体の隙間の合計(㎠) ÷ 延床面積(㎡)
今回の結果は・・・
C値 =0.2㎠/㎡
当地域ではほぼ最高クラスの数値になりました。
以前のブログ(「すき間だらけの日本の住宅」/「住まいの呼吸法」)でもご紹介したように、日本の既設住宅の90%以上が今回の値の25倍の大きさにあたるC値=5㎠/㎡以上と言われていますが、実際のところ、まだ多くの住宅会社ではまだ測定すらしていないため実態は不明です。なぜならば、このC値の測定は、改正された省エネ基準法でも義務化されていないからです。それに対し、私たちが自主基準としているのは、C値=0.5㎠/㎡以下。40坪の家であれば、隙間は名刺1枚分程度というレベルを必達条件としています。今回の数値は、その半分以下であるC値=0.2㎠/㎡。数値としては当地域で最高レベルです。もっとも、C値は0.5を切れば気密性としては十分な性能値になりますので、この数値ばかりを追い求めることは本筋ではありません。
ちなみに、私たちの断熱・気密施工は、通常のグラスウール断熱材(袋状の断熱材)を敷き詰めていく工法ではなく、断熱性能としてもトップクラスのフェノールフォームパネルを隙間なく設置する断熱工法を採用しています。工場で正確にカットされたパネル材が柱や梁とがしっかりと密着しており、基本的に接合面の隙間が発生しにくい構造となっています。さらにそこに気密テープで接合部分を完璧に塞いでいるため、基本、ミリ単位の隙間は発生しない構造になっています。
この隙間の大きさが与える住宅の温熱環境の差は歴然です。これが夏冬の冷暖房機器の運転効率に大きな影響を与え、結果として年間の光熱費が大きく変わります。また、隙間があるかないかは、即ち結露→カビの発生の有無に影響し、長年にわたって住まいの健康と人体の健康に大きな影響を与えるものになるのです。なお、未だに「住宅を高気密化すると息苦しい家になる」「空気が悪くなりかえって不健康になる」「家の寿命が悪くなる」という誤った主張をされている業者さんもおられるようですが、これは全く根拠のない都市伝説です。現在の住宅は24時間換気システムの導入が義務化されており、時間当たりの換気回数も建物の種別によって明確に規定されています。「なんとなく隙間風が通る家の方が健康」と家の気密性を中途半端に落としてしまうとかえって換気効率が阻害され、健康被害を招く原因となり危険です。しっかりとした科学的な根拠をもって住宅の断熱・気密性能を理解する必要があります。
私たちのこの隙間の小さな家づくりは、設計段階における工法の選定と、施工段階における緻密なチェックと丁寧な施工作業の徹底によって生み出されます。私たちの施工現場では、専任監督がしっかりと目を行き届かせ、一棟一棟丁寧に確認しながら作業を進めています。また、勉強熱心で気密に関する理解がある優秀な大工チームがパートナーにいることも重要な要素です。
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省力化してはいけない部分
June 24, 2017
キノイエの設計段階のラフスケッチをご紹介します。こちらは、現代町家の提唱者でもあり、キノイエのアドバイザーとして外部協力いただいている建築家の趙海光(ちょう うみひこ)先生より描き下ろしていただいているものです。
キノイエの設計における心臓部は、ベース(本体部分)とそこにドッキングさせるゲヤ部分との位置関係。まず、ベースとなる本体部分は6m×6m、あるい6m×8mの総二階の構造を基本に据え、主たる生活空間として何が重要かを動線を含めて徹底的に考えます。そこに必要となる付加すべき居住空間の機能を考えてゲヤ部分を決定します。ただ並べるだけではなく、ずらす、離すなど、この位置関係を工夫することによって、離れ部屋が生まれたり、リビングが拡大したりとあらゆる可能性が広がります。
ちなみに、このラフスケッチ案では、ベースをナナメに振っています。そうやって振ることで、ベースの周りに庭が生まれ、ソトを上手にナカに取り込むことはできないか、ベストな視界が生まれるのではないか・・・と考えたりするわけです。なお、ベースをナナメに振ってはいますが、基本構造がシンプルにできていますので、建築コストが驚くほど跳ね上がったりはしません。
本体の構成はシンプルながら、内部の位置関係は、そのご家族のライフスタイルを念頭に、このように徹底して考え抜いていきます。自由設計は高く、プランをパターン化してある量産型の規格住宅は安いと単純に考えてしまいがちですが、重要なのは、構造的なコストダウンを図りながらも、ソトを生かしたナカの空間の広がり、あるいは実際の生活動線の最適解を導き出すために徹底して英知を絞り出すことではないかと思います。ハードは省力化しても、暮らし方の検討は省力化してはいけません。そういう意味で、住宅設計のプロとしての力量が試される部分は大きいと考えます。
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家族のタイムテーブル
June 21, 2017
住宅建築業界の中で、現在5万部を超える人気の書籍となっている『住まいの解剖図鑑』。もともとは住宅設計を学ぶ建築系の学生向けに書き始められたものが、設計実務を始めたプロ向けの基本を学ぶコンテンツとして進化、さらには、「もしかすると、これから自宅を建てようとする一般の人にも、最低限身これくらいの知識は身につけてもらってもいいのでは?」との思いから加筆修正が加えられて生まれたのが本書です。
そのため、本当にいい家を建てたいと考えている方の中で、非常に敏感な方は既にこの書を手にしているかもしれません。これを読めば、家づくりで本来見失ってはいけない非常にコアな部分に触れることができ、コンビニ化した住宅業界のパッケージ住宅を買うことが、いかに勿体ない買い物であるかということに気付かされます。あるいは反対に、「中途半端なプロ」が陥りやすい「過剰設計」の落とし穴についても厳しく指摘しているバランスの取れた指南書です。私たちから見ても非常にユーザー目線で書かれた良書だといえます。
著者は、住宅設計の第一人者である故吉村順三氏の下で9年間学んだ建築家の増田奏(ますだ すすむ)氏。「家族が日々の暮らしを営み、生命を育む「住まい」に何より大切なのはその場所が「心地よい空間」であること。」と提唱する氏の著書の中には、実は、私たちキノイエが大切にしている住まいの要諦をほとんど網羅しており、私たちにとっても非常にわかりやすい住宅づくりの教科書といっても過言ではありません。
特に、「心地よい家のプランは「引き算」でつくる」という増田氏の設計理念は、キノイエの「小さくつくって大きく暮らす」「引き算の設計」そのもの。本日は、そんな増田氏の著書の中から、独自の視点で書かれた、とても参考になる項目を一つご紹介したいと思います。
その名も「家族のタイムテーブル」。
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私は必ずご家族のタイムテーブルを書いてもらっている。家を建てる時点での家族構成や年齢にぴったり合うようにつくり込んでしまうと、早ければ5年で住みにくい家になってしまうことさえある。人間は必ず年をとるものだからだ。
そこで私がお勧めしているのは「割り算」。すなわち子どもの成長、あるいは両親との同居の可能性などもあらかじめ想定して間取りの可変性を確保しておこうというものだ。
例えば部屋にはドアを2つ付けておく。子ども部屋なら小さいうちは2人で1つの部屋でいいが、自立心を持ち始めたり、受験の時期が来たら間仕切って個室2つに分けられるようにしておく。子どもたちが成長して巣立った後は、もとの1部屋に戻してもいいし、別の空間として利用することを考えてもいい。部屋に出入り口が2つあると可変性はもちろん、住まいの動線に回遊性が生まれ、格段に住みやすくなる。
可変性の確保や間取りをルーズに考えるという発想は、そもそも日本の伝統的な住まい方だ。今でこそ日本の家もダイニングやリビング、寝室など、空間の用途によってプランニングされるようになったが、かつては6畳間、8畳間など、空間の広さだけが認識され、部屋名などなかった。昼間は卓袱台を出して家族でご飯を食べ、近所の人がやってきて一緒にお茶を飲み、学校から帰ってきた子どもが宿題をする空間で、夜になると布団を敷いて寝ていたのだ。
こうした暮らし方は、今でもそれとなく伝承されている。例えば小学生ぐらいまでの子どもは自分の部屋ではなく、両親と一緒に、いわゆる川の字になって寝ているケースが多いだろう。欧米の住宅では考えられないことだが、この柔軟で臨機応変な住まい方こそ日本の住宅の特長だ。
家づくりでは、建築家やハウスメーカーなどの専門家の提示するさまざまなプランを検討する中で、自分たちがどのように新しい家で暮らしていくのかがだんだんと整理されてくる。その過程で大切なのは、専門家や知人が勧めるからなどと人まかせにするのではなく、最後は自分たち家族でこのプランにすると「決心」することなのだ。
車なら実際にいろいろな車に試乗し、比較検討した上で決められるが、家の場合は、いろいろな家に同時に住んでみて実際の住み心地を比較検討して決めることなどできないからだ。自分たちで決めたのだということで、この家でこんな暮らし方をしていくとの覚悟もできる。かくして、わが家はまぎれもなく自分たち家族にとってかけがえのない最も心地よい空間になっていくのではないだろうか。
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いかがでしょう。家づくりは、一生に一度と考えたとき、相手が「住宅のプロ」だと過信し、自分たちの思考を止めて全てを委ねてしまうことは、いずれ大きな後悔につながります。こうした視点を持つことで、皆様にとって本物に相性の良い家づくりパートナーを見分けることができるのではないでしょうか。
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