まちの風景を構成する素材を生かす
September 22, 2016
地元にあるちょっとした古い石積みの塀垣。
上越地域には、まだこうした古い構築物が様々な場所に残っています。そして、その地区のまちなみを形成する風景の一つとして溶け込んでいます。そしてよく見ると、その古さもまた、デザインとして見た時に様々なインスピレーションが生まれます。
例えば、その石積みの塀垣に生えた苔。苔は自然が生み出したアート。独特の質感を持ち、他の草木にはない色合いを持っています。また、陽の光を受けると鮮やかな色彩を放つという特徴も持ち合わせています。こうして、視点を変えると様々な生かし方が生まれてくる苔は、実際、すでに伝統的な和風建築の庭に留まらず、現代の住宅や商業施設などにも活躍の幅を広げ、進化を続けています。そんな素晴らしい素材が、このまちのあちこちに風景の一部となって存在しているのです。
ちなみに、2020年東京オリンピックの新国立競技場のデザイナーとしても注目を浴びている建築家の隈研吾氏も、軽井沢のアートミュージアムに「風通る白樺と苔の森(チャペル)」と題したこんな作品を残しています。
ソトとナカをつなぐ小さな邸宅。キノイエの設計思想には、こうしたまちの風景を構成する素材を生かすことも重要な仕事であると捉えています。
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すき間だらけの日本の住宅(後編)
September 15, 2016
昨日は、日本の住宅の高性能化はまだ発展途上ということ、中でも住宅のすき間が大きいと住宅の性能に大きな影響を及ぼし、様々な弊害を生むということについて触れました。本日はその続きで、このすき間面積を下げる取り組みと次世代省エネ基準との関係、住宅業界の現状についてお話ししたいと思います。
一般的に、住宅の隙間を測る基準として「C値」(隙間相当面積)と呼ばれる指標が使われます。C値とは、建物面積1㎡あたりにどれくらいのすき間面積があるかを示した数値になり、例えば、C値=3とすると、建物1㎡あたりに、3㎠の隙間が存在するということになります。
ちなみに、現在の日本のストック住宅の90%以上は隙間が大き過ぎてC値の測定ができないレベル(一般的には、C値=5㎠以上で測定不能になる)というのが実態で、そのすき間のサイズは40坪の家に例えると、新聞紙を広げた以上の大きさになるといわれています。また、そもそもC値の測定そのものを実施していない会社が大勢を占めているというのが実態なのです。
ところで、次世代省エネ基準には、外皮平均熱貫流率(UA値)と呼ばれる、住宅の断熱性能を表す指標が使われますが、実は、C値の測定義務がないのです。つまり、どれだけ断熱性能等級の高い建材を使用して、基準に満たした住宅を建てたとしても、すき間に関しては全くの無法地帯ということになります。例えていうなら、「カシミヤ100%の厚手のコートに無数の穴が空いていてたとしても、それは次世代基準をクリアしたコートです」となるわけです。これが2020年に義務化される次世代省エネ基準の姿なのです。(UA値については、また別の回でお話ししたいと思います)
ちなみに、一部では非公式ながら、次世代省エネ基準におけるC値の目安は5㎠/㎡程度であるといわれています。繰り返しますが、目安であって測定義務はありません。C値=5㎠/㎡とは1㎡当たりのすき間が5㎠という値で、延べ床面積40坪の住まいで例えるなら、すき間はA4サイズのノートパソコンの画面くらいの大きさになります。実は、多くの一般的な大手ハウスメーカーや工務店のC値平均が2~5㎠/㎡(まだ測定そのものを実施していない会社も多い)と言われています。実は、住宅にこれほどのすき間があると、前述した計画換気も不完全となり、全室空調の循環機能などに確実に影響します。結果、室内の空気汚染の心配に加え、足元と天井の温度差や部屋毎の温度差が拡大するという現象が生まれます。
それに対し、キノイエの家はC値=0.2~0.4㎠/㎡が標準です。例えば40坪の家の場合、その隙間は名刺のおよそ7割の大きさしかありません。ここまでのレベルになると計画換気はほぼ完璧で、室内の空気循環は安定し、冷暖房効率も目に見えて向上します。結果として足元と天井、ひいては1階と2階の温度差が解消されます。
ただし、すき間だけに意識を向けていても片手落ち。それだけではいい家にはなりません。巷にはC値レベルをもっと下へ下へと追求し、ことさらC値を強調する住宅会社も存在しますが、C値は0.5~0.3㎠/㎡の範囲であれば充分で、それ以下のC値競争はあまり意味を成しません。それよりもむしろ、どのような断熱施工を組み合わせるのかによって、はじめてコストバランスの良い高性能な省エネ住宅になります。
ちなみに、キノイエは、結露の心配のない最高レベルの断熱性能を持つフェノールフォーム断熱材と構造材をサンドイッチにしたパネルを組み合わせることで、職人の技量のばらつきの影響を受けにくい高い施工精度を保持しつつ、気密性と断熱性、そして同時に耐震性能を高水準で実現しています。
日本の住宅業界はデザイン的には進化していますが、その中身の大きな違いについては、ほとんどの消費者の皆様には伝わっていません。賢い住まいづくりには、買い手の皆様のちょっとした勉強が大きく左右します。
ちょっと難しいテクニカルな話になりましたので、本日はこの辺で。次回は断熱性能のさらに詳しいお話や、他の指標についても少しずつ紐解いて解説してまいりたいと思います。
省エネ建築士の資格を持つキノイエのスタッフたち
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すき間だらけの日本の住宅(前編)
September 14, 2016
住宅の広告には、「高気密・高断熱」、「省エネ」、「ゼロエネルギー」等のフレーズが飛び交っています。各社は住宅の高性能化をしきりに宣伝し、消費者の皆様の心を掴もうと躍起になっています。
ここで、結論から申し上げますが、実は、日本の住宅の高性能化はまだまだ発展途上です。
政府は、改正された「次世代省エネ基準」を明示し、2020年までに全ての新築建造物の断熱化を義務化する方針を打ち出しています。そして、各社は自分たちのつくる住宅が、既にその基準に適合しており安心かつ省エネであることをしきりにアピールしています。しかし、果たしてその基準自体が具体的にどのレベルなのかを語る住宅会社が少ないように思います。(「次世代省エネ基準」をウィキペディアで調べていただけると、その位置づけが少しお分かりになると思います)
今回は、住宅性能の一端を握るものさしである「すき間」について例に挙げ、従来の一般的な住宅と次世代省エネ基準、そして私たちキノイエが快適標準性能と考える基準の違いについてお話ししてみたいと思います。
住まいの性能を語る際、いくら高品質の断熱材を使っていても、すき間だらけの家では全く意味がありません。すき間が大きくなるほど、建物の燃費が悪化するのはもちろん、外気が直接触れることで室温と外気温の温度差による結露発生のリスクが上がり、健康被害など様々な問題を引き起こします。
そして何より、気密性の悪い住宅は「換気不良」を起こします。つまり、「計画換気」の出来ない状態に陥り、汚れた空気がいつまでも住宅内を滞留することにつながります。穴だらけのストローではちゃんとジュースを吸い込めないのと同じです。
何となく「行き過ぎた高気密化は住宅を息苦しくさせ、空気を悪くする」「適度に隙間がある方が住まいの空気環境によい」「遮断ではなく自然との調和」ということをうたう住宅会社もあるようですが、それは建築セオリーから見ると全くの誤りです。中途半端なすき間住宅ほどたちの悪いものはありません。イメージに惑わされず、住宅性能の本質を具体的に語れる住宅会社を探すことがとても重要です。
少し長くなりますので、本日はここまでとして、続きは明日のブログにて詳しくお話ししたいと思います。
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玄関ホールを使い倒す
September 13, 2016
住まいの設計で、多くの人が壁に当たるのが、「膨らんだ間取りをいかに縮めるか?」という問題。予算とのにらめっこでいちばん神経をすり減らす部分です。夢をたくさん詰め込めば詰め込むほど、それに比例して間取りは大きくなるものです。
そこで、キノイエでは、最初から間取りの足し算ではなく、「引き算する設計」を軸にしたプランニングを行っています。引き算する設計には、様々な極意があります。その一つは、「使わないスペースを極力排除する」、あるいは、「使う頻度の少ないスペースを極力縮める」です。そしてもう一つの方法、それは、「あまり使わないスペースを多機能化して使い倒す」です。
平牛の家 玄関ホール
その分かりやすい一例が玄関ホール。玄関ホールが使われるのは、自分たちの出入りと来客対応時。つまり、使うタイミングは非常に限られており、実際は閉じられたままで使われない時間の方が圧倒的に多いのです。見栄を張らない限り、本来のスペースとしては最小でいいということになります。小さくつくって大きく暮らす設計では、ここを小さくすることが原理原則になっています。
平牛の家 玄関ホールから外へのアクセス
しかし、キノイエでは、あえてこの玄関ホールを普通よりも広く取るケースがあります。まさに、「どうせあまり使わないスペースなら多機能化して使い倒す」の発想です。写真のように、塩屋新田の家、平牛の家どちらも玄関ホールはあえて広く土間スペースを確保し、リビングの中に取り込んでいます。リビング自体の設計面積は、わずか11~15帖程度とかなりコンパクトなのに、この玄関ホールを取り込むことで、こんなにも広々した空間に変わります。そして、この土間空間こそが、外のデッキスペースや庭、離れスペースなどに接続するハブのような存在となっており、一日の流れの中で幾度となく使われる、まるで第二の勝手口のような機能を果たしてくれます。
平牛の家 リビングから玄関ホール(障子で玄関ドアホールを隠した状態)
塩屋新田の家 玄関ホール(引き戸により、土間部分を2つの空間に仕切ることが可能)
「でも、来客があった時は丸見えじゃないの?」という疑問の声が聞こえてきそうですが、ご心配なく。たった一枚の引き戸を入れておくだけで、その時だけ空間を一度遮断し、小さな玄関ホールをつくります。そうすることで、急な来客や宅配便の受け取りなども、プライバシーを確保しながら応対が可能になるのです。
使う頻度が少なければ、発想を変えてよく使うスペースに取り込む。ちょっとしたことが大きな意味を持つ、引き算する設計のちょっとした極意。その一部のご紹介でした。
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いちばん伝えたいのは
September 11, 2016
先日、キノイエの「コンセプト会議」(勝手に命名)を行いました。内容はイベント企画や発信方法についてなど様々。
コンセプト会議とかっこいい名前を付けておきながら、実は、関係者数名でコーヒーを飲みながらフリートーク(笑)この日の大きなテーマは、キノイエの良さを伝えるために、いちばん大切なことは何か?でした。
結果、たくさんの素晴らしい意見、アイディアが飛び出しました。でも、落ち着くところ、いちばん大切なことは、「この家の何とも言えない心地よさをとにかく感じてもらうことだよね」という話に(笑)
いいものに理屈はいらない。感情を揺さぶる「何か」がある。その一点にフォーカスした伝え方を整理してみようという話になりました。仕事ながら、こういう時間が楽しいと思える環境に感謝です。
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庭づくりの重要性
September 8, 2016
ずっと未完成状態が続いていた塩屋新田の家の庭が、このほどようやく完成しました。
ここまで完了が長引いたのは、竣工当時まだ計画中であった南側に隣接した建物の位置関係、外観の確定を確認した上で、リビングからの視界と、お隣さんからの視線との関係を見極めてからという事情がありました。庭づくりの成否は、隣接する家々との関係を考えてこそ成り立つものです。ソトを上手に取り込み、ナカの暮らしに広がりを生み出す庭の存在は非常に重要。だから、なるべく隣接建物の計画がある場合は、慌てずその完成を待ってから行うのがベターです。
今回の庭づくりにおいては、幸い、こちらのリビング側に面したお隣のお住まいの窓が水回りのすりガラス窓や収納室の窓が中心らしく、普段の生活シーンでほぼ直接的に目線が合うということがないということが分かりました。加えて、外壁もシンプルな黒単色の波型金属サイディングであったために、色彩的な干渉も少なく、周辺の視界を遮る役割も担ってくれています。結果としてプライバシー性の高い中庭のような空間になりました。母屋だけでなく、カーポートや離れとの連続性が生きるこの庭の利用価値はまさに無限大です。なお、西側の敷地はキノイエの住宅建設予定地でもあるため、塩屋新田の家とのつながりも考えて自由に考えることができ、2軒のつながりも含めてこれからのプランニングが非常に楽しみです。
完成といっても、本当の庭づくりは実はこれからが本番。庭に植えられた多くの植物たちがきちんと成長するように面倒を見ながら、小さな森をつくることが目標です。今回、庭木には、モミジやセイヨウカマツカ等の落葉樹に加え、ナンジャモンジャ等、四季折々の表情を楽しめる樹種を選びました。そして、ちょっとした遊び心で、中央に流木を配置。ちなみに、この流木、私たちの住む上越地域では、海岸に行けばそれなりに簡単に手に入る何の変哲もない代物ですが、所変わるとその価値は一気に変わります。特にこの上越地域から内陸部に位置する長野県内に住む方にとって、流木は非常に入手困難な高級品。おそらく、写真のサイズの流木だと、所変われば‟ん万円(?)”になる可能性もあります。
地元に眠る、こうした付加価値の高い素材に目を向け、暮らしの一部に反映させる・・・地元で生まれ育った私たちが家づくりで行うべき、とても大切な仕事であると考えています。家づくりを通して、ご家族にとっての「最高の地元ライフ」を実現すること。それが私たちの仕事です。
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建築家 趙海光先生からの応援メッセージ その2
September 7, 2016
キノイエの企画・設計・監修を担当していただいた建築家の趙海光(ちょう・うみひこ)先生から、素敵な応援メッセージの第2弾が届きました!現代町家の考え方を提唱し、全国の建築関係者から注目されているその道のエキスパートでもある趙先生が、私たちのために特別に寄稿していただきました。
趙海光(ちょう うみひこ)先生
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【その2 キノイエの職人さんたち】
みなさんこんにちは。残暑にあえぐ東京目黒から、二回目の応援メッセージを送ります。
前回は我が家のリフォームの話でしたが、こんどはキノイエの現場で出会った職人さんたちの話。とっても魅力的な人たちでした。ただし、実際にお顔を拝見したのは大工さんだけなんですけどね。なのにどうして魅力的だって分かるのか?
うん、そこが私たちの仕事の面白いところです。
図面を描くとそれが現場で実物になるって、当たり前みたいだけど本当は凄いドラマだって思いません?
実物ができるのは図面があるから、では図面にはいったい何が描いてあるのか。
形?寸法?素材?色?どれも大事ですけど、でもいちばん大事な情報は「どうつくって欲しいか」というメッセージなんです。
もちろん言葉でそう書くわけじゃなくて、あくまでもこれは寸法や素材を通しての密かなメッセージなんですけどね。このメッセージがうまく伝わるかどうかが図面を描く人間の腕の見せ所。たとえばキノイエの障子の図面に、私は桟の幅15ミリと描きました。図面を受け取った建具屋さんはきっと疑問を持ったはずです。———ふつうの障子は外枠と中桟の寸法が違うはずなんだけど、なんでこの図面はどこもみな15ミリなんだろう?
このとき建具屋さんに、「あーあ、このヒト(図面を描いたヒト)現場を知らないな」と思われたらアウトです。そう思われないために、図面を描く人間は寸法や形にメッセージをこめる。この障子の場合、図面に描かれた全体の形を見たとたんに建具屋さんの疑問は解消されたはずです(きっと)。「ああ、なるほど、そういうことか、ヨシムラ式ね。」
前にもこのキノイエブログのどこかで触れられていましたが、この障子はかの建築界のレジェンド「吉村障子」の変形バージョンなのです。
そのむかし吉村順三という昭和の大建築家がいて珠玉の住宅をつくりました。彼が編み出したのが升目の大きな荒間格子の障子です。で、その最大の工夫は中桟と縦框の幅を同じにしたところ。こうすると二枚の引き違い障子が、離れてみるとただの一枚障子に見えるんですね。
ところで正統の「吉村障子」は碁盤の目格子なのに、私の設計は縦格子で横桟は一本だけ。きっと職人さんは苦労したと思うのですが、その出来映えはなんとも見事なものでした。現場で完成した姿を見てちょっと感動。嬉しかった。
さてこんな話をしたのは、じつは心配だからです。———やがて職人さんとこんなふうに図面で語り合うみたいなつくり方はできなくなるんじゃないか。
いまはなんでも既製品の時代で、図面を介して職人さんと対話しながら手づくりするチャンスはどんどん減っています。当然のように職人さんも減ってますから、そのうち図面を描いてもそれを実物にするヒトがいない、なんてことになりそう。そうなると私も失業しちゃうわけで、うーん、これはピンチ。
でもね、こういう場合は明るくいったほうがいい。嘆いたって始まらないんです。嘆くよりは、どうやったらいまの既製品全盛の時代に職人さんの腕を活かせるかを考えるべきなんですよね。
というわけで、キノイエ設計チームではこう考えました。つまり、全部を手づくりにしようなんて思わない。既製品が活かせるところは既製品でOK。ただしいまでも手づくりのほうがリーズナブルなところだってあるのだから、その部分をなるべく増やそう。
そこで私が思い出したのはあるグループのことでした。
東京に「わざわ座」というのがあります。「わざわざ、やろうよ」を合い言葉にした職人、デザイナー、工務店の集まりです。彼らが考えたのは「職人が手仕事でつくる道具を、デザイナーが計画して、工務店が四方良しの価格で住み手に手渡す」というやり方。つまり「手仕事を活かすためのネットワーク」なんですね。
「四方良しの価格で」なんて、泣かせるじゃありませんか。大工さんに頼んでテーブルやキッチンを手づくりしてもらう、なんてことはこれまでにもよくありましたが、ここではそれをもっと組織的に計画的にやろうというわけです。
これをお手本にキノイエでも、障子に限らず他のところにもできるだけ手づくりのパーツを増やそうとみんなで知恵を絞りました。キノイエに置かれているソファー、テレビボード、パントリーなんかはそんな考え方から生まれたものです。
これらはみんなキノイエの大工さんが、新潟産の厚板を素材にして型紙(図面)からつくってくれました。型紙は保存されていますから、お望みならこれをお読みの皆さんにも同じものをお分けできます。(値段はたぶん家具屋で買うよりも安いはず。)
IKEAで量産品を買うのもよいですけれど、チャンスがあったらキノイエネットワークがつくる新潟産厚板クラフトワークの品々を使ってみませんか。そうすると地場の製材所や職人さんにもお金が回って、ちょっとだけみんなの暮らしが良くなります。
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趙先生、本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。(キノイエ スタッフ一同)
趙 海光 ちょう うみひこ (一級建築士)
1972年法政大学工学部建築学科卒業。1980年(株)ぷらん・にじゅういち設立。
1990年代に台形集成材を使用した一連の木造住宅「台形集成材の家」を設計。
2000年代に「フツーの木の家」シリーズ。
2007年以降は町の工務店ネットと共同で「現代町家」シリーズに取り組む。
一貫して国産材を使用した現代型の木造住宅を設計するとともに、『住宅建築』誌を中心に木造住宅についての論考を多く発表し、国産材の開発と普及に努めている。
編著書に『高山建築学校伝説』鹿島出版会。
また『新建築住宅特集』に「在来工法ファイル」を連載(2004~2005年)
受賞歴
2011年 「びおハウス」により、チームおひさまのメンバーとしてグッドデザイン賞。
2009年 「博多・現代町家」により、町の工務店ネット、長崎材木店とともにグッドデザイン賞。
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天井で変わる暮らしの快適さ
September 2, 2016
キノイエの住まいの特徴の一つに、地元糸魚川産の杉板ですのこ張りにした2階の天井があります。
見た目にもやわらかい天然木の風合いがあり、毎日見ても飽きない普遍的な美しさがあります。
しかし、それだけではないんです。本当の価値は、その性能にあります。
杉板のすのこ張りの内部には、いくつかの断熱工程が組まれています。まずは、外周部と同じ厚さのフェノールフォーム断熱材により、屋根から吸収される日射熱を高い次元でブロックします。フェノールフォームについては、以前のブログでもご紹介しましたように、他の断熱材と比べて圧倒的に湿気を通さない性質を持つため、結露の心配がありません。さらに、内側からは、木質系繊維断熱材(ウッドファイバー)を敷き詰めてあります。これによって、驚くほどの蓄熱効果と防音効果が生まれます。
この屋根断熱の違いは、想像以上にその後の皆様の暮らしに影響します。なぜなら、高齢になるまでの一定期間、私たちの多くは2階で睡眠をとるからです。天井の蓄熱性能は、夏季の高温時、冬季の冷え込みに対し、緩衝材としての大きな役割を担います。そして、年間の降雨降雪量が多いこの上越地域の気候により、時々訪れる激しいスコールのような雨、冬は時折やってくるみぞれやあられが激しく屋根を叩く音。特に安眠を求める夜中の影響は最小限に食い止めたいものです。木質系断熱材の効果によりそうした外部のノイズ軽減に加え、当然ながら室内の音の響きも抑制してくれます。高級車のドアを閉めた時のソフトで重厚感ある音がそうであるように、音の響き方は質感です。間取りは同じでも、そうした設計の工夫で得られる満足度の違いは、体感することでよく分かります。
活動時も就寝時も含め、暮らしの中のあらゆるシーンでの快適さの追求は、私たちの重要な家づくりにおけるミッションです。見た目のデザインや価格偏重、単に自然素材を使えばよいというものではなく、根拠と効果のある快適さを求めて素材と施工方法の最適な組み合わせができているか、プロとしての力量が問われる部分です。
特に、屋根の断熱性能、施工方法の違いについては、なかなか素人目にはわからないものです。しかし、住宅会社の考え方によって大きな差になっている部分でもありますので、じっくりと比較されることをお勧めします。
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「テロワール」と地元の木
August 31, 2016
ワインの価値は、「テロワール」で決まると言われています。
テロワール(Terroir)とは、「土地」を意味するフランス語terreから派生した言葉で、 もともとはワイン、コーヒー、茶などの品種における、生育地の地理、地勢、気候による特徴をさすフランス語です。 同じ地域の農地は土壌、気候、地形、農業技術が共通するため、作物にその土地特有の性格を与えると言われています。その独特の地域性がワインの個性となり、その違いがそれぞれのブランドにつながっています。つまり、地域性がブランド競争の原点になるというのがワインの世界の常識です。
さて、本日は、ワインとは関係ありませんが、このテロワールに関連するようなお話を家づくりに絡めてしてみたいと思います。
私たちは、定期的に地元の製材屋さんと情報交換をしています。
新鮮な情報は現場にあります。お客様のために、少しでもよい材料の選別や、最新の加工技術の情報交換もさることながら、時には、昨今の木材市況の話や経営の話に至るまで、内容は多岐に渡ります。
その中で、最近特に頻繁に話題に上がるのは、「地元産の木材がなかなか思うように出荷できない」というもの。その深刻さは年々増しているようです。最大の要因は、住宅そのものが工業規格化されていき、かつ室内はビニルクロスで覆われ、構造材としてはほとんど見えない家づくりが主流になってしまったため。海外の安価な材料が市場に出回り、国内各地で製材をしても品質の良さが伝わらず、価格競争で埋もれてしまうという話は、全国の製材業に共通する悩みでもあります。
そのような市場背景のため、国内では数十年前に国策で植林された非常に質の良い、主に杉材を中心とした原木が、伐採されることなく眠っているケースも少なくありません。
仮に、運よく切り出された原木でも、主たる構造材や造作材として製材されずに残ってしまっているものが多く、出荷されずに年数が経ってしまうと、今度は劣化が始まり、黒ずんだり、肉痩せや変形を生じ、最後は製品としての価値を失ってしまいます。また、そのような環境が伐採業者の衰退を生み、今では、街中の老木に倒壊の危険性が発生しても伐採処分ができる職人をすぐに手配できないという状況も生まれています。
地元の気候風土の中で育ち、いちばん身近にある天然の材料なのに、使われないままでいるのは、非常に勿体ないことです。
そこで、私たちのような家づくりの立場と、木の特性をいちばんよく知る製材工場の立場のスタッフが膝を突き合わせ、「地元の木の生きる道」について真剣に語り合うことがとても重要な意味を持ちます。お客様のニーズ、その木のもつ特性、価格、利用価値・・・これらについて自由に意見をぶつけ合っていると、ふとした時に、素晴らしいアイディアが生まれる場合があります。
キノイエの標準仕様である杉板の外壁材(以前のブログでも紹介)は、そうした製材工場の中で、品質は上等ながらも運悪く眠っていた地元糸魚川産の杉材を、キノイエのデザインのためだけにオリジナルピッチでカットして生まれたものです。価格も手ごろで、輸入材にはない独特の風合い、そして何より「地元で生まれ育った」ストーリー(=テロワール)の重みが、住まう人にとって特別な意味と愛着につながります。
他にも、以前のブログでご紹介した、地元杉の幅はぎ材でつくられたオリジナルテーブル。デザイナー家具の良いところを応用しつつ、材料は地元調達。製材屋さんとじっくり吟味し、価格と品質のバランスのいいものだけを厳選し、いちばん杉の木目が美しくなるように合わせていくことで、価格以上の付加価値を持たせることができます。
地元の木を地元の職人が切り出し、地元の技術者が加工し、地元の住まいに利用され、地元の人々の暮らしと共に愛され受け継がれていく。――この美しい地域循環に魅力を感じる人は、けして少なくないと思います。家づくりにテロワールの考え方を持つことで、もっと自分たちの住まいに愛着が深まるのではないでしょうか?
まさに「最高の地元ライフ」。――私たちは、そうしたことに共感していただける皆様に、手間暇を惜しまず、しかし手の届く最高の暮らしをお届けしたいと考えています。
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床と天井の連続性
August 29, 2016
床から数十センチ浮いたテレビボード。
天井から壁がつながっていない和室。
手前に見えるパントリーもよく見ると、天井から少し空間が空いています。
二階の天井も同様に、水回りスペースの上は小屋裏収納がむき出しに・・・
お気づきですか?床と天井の連続性は、空間の広がりに直結します。
小さくつくって大きく暮らす。コンパクトでハイクオリティ、かつコストバランスのいい住まい。引き算の設計とは、単に間取りを小さくするだけではない、様々な工夫がちりばめられているのです。
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